相続発生前の遺産を巡る紛争
「相続が発生する前から遺産を巡ってトラブルが起こっているがどうすればよいか」
最近多い法律相談です。
財産を有している高齢者の相続人間で、遺産の管理をするために、それぞれが被相続人候補者に近づき、自分が遺産を取得できるようにあの手、この手で策を講じるのです。
少し判断能力が低下した被相続人候補者を双方が連れ出して、全く内容の違う遺言書が何通も作成されているケースや(最後の遺言が効力を有するので、次々に遺言書が作成されるのです。)、預金通帳等の財産自体を事実上、自己の管理下においたり、管理している人に「渡せ」と通知するケース…。
いずれも傍からみると、親族間のドロドロの争いに見えてしまいます。
まず、財産を有している人は、自分が死んだ後、残った財産をどう相続させるかをよく考え、自分の意思で遺言を残すことが大事です。
その際、推定相続人に対して、きちんと遺言内容を説明できていればベストです。
また、本人が遺産についてきちんと意思表示をしないまま判断能力が低下してしまい、推定相続人間で争いが起きてしまった場合は、後見人を選任して、公正に財産管理をしてもらうとよいでしょう。
今は、任意後見契約といって、自分の判断能力が低下したときに財産管理等をお願いしたい人とあらかじめ契約を締結しておくことができますので、自分に判断能力があるうちに後見人を選んでおくことができます。
相続に関するトラブル防止のために様々な制度がありますので、弁護士にもよく相談して、自分の相続人にトラブルの種を残さないよう手当をしておくことを考えるべきでしょう。
遺言書の必要性
私は、相続に関する法律相談を受けることも多いのですが、遺言がない状態で相続が発生した結果、権利関係が非常に複雑になってしまったというケースが散見されます。
特に不動産が遺産となっている場合、複数の相続人がいると相続人間で共有の状態となってしまい、問題が複雑化しやすいのです。
例えば、亡くなったAには、妻Bがいるが、子はおらず、Aの両親はずいぶん前に亡くなっていてAには兄弟C、Dがいるというケースを考えてみます。
Aの遺産に土地建物が含まれている場合、法定相続分にしたがうと、当該土地建物については、妻Bが4分の3、C、Dがそれぞれ8分の1ずつ(兄弟合わせて4分の1)の共有持分を取得することになります。
しかし、仮にAよりもDが先に死亡しており、DにE、F、Gという3人の子がいた場合、Cの8分の1の相続分はEFGが3人で相続することになり(これを「代襲相続」といいます。)、結果的に当該土地建物は、妻Bが4分の3、Cが8分の1、EFGがそれぞれ24分の1ずつの共有持分を取得することになります。
事案によっては、妻BとEFGにあたる人物の交流がほとんどないようなこともあり、そのようなケースでは土地建物の分け方でトラブルが発生してしまいます。
不動産が共有の状態となっている場合、共有物分割の手続きを行う必要がありますが、この手続きは非常に面倒ですし、人的関係が薄い者同士や、そもそも感情的な対立がある者同士の共有物分割は必ずといっていいほど揉めます。
そのような事態を避けるためにも、遺産(特に不動産)を有している方は、必ず遺言を作成し、どの遺産を誰に相続させるかの意思表示をしておいて下さい。
弁護士瓦林の相続に関するブログ記事
「遺言と遺言執行者」
https://www.pyxida-law.com/fukuoka/blog/2014/03/post-8-789941.html
「相続発生時の注意点」
https://www.pyxida-law.com/fukuoka/blog/2014/03/post-6-783203.html
「失踪した者が相続人となっている場合」
https://www.pyxida-law.com/fukuoka/blog/2014/04/post-23-838004.html
人事労務担当者向けセミナー@那覇
こんにちは。
弁護士の瓦林です。
先週、2日間にわたり、那覇の産業支援センターというところで中小企業の人事労務担当者向けセミナーを行ってきました。
2時間の講義を4コマ行ったので、合計8時間しゃべってきたのですが、受講した那覇の企業担当者の方からはご好評をいただきました。
主催の㈱経営支援センターの担当者の方とも協議し、次の機会には、さらに労働問題のピンポイントな話題でセミナーを行うことを検討しています。
今後も実務に役立つ情報の発信を継続していきますので、よろしくお願いいたします。
秘書検定
秘書の渡部です。
だんだん秋らしい陽気となってきました。皆様体調を崩されないようご自愛くださいませ。
先日(といってもひと月以上前になってしまいましたが)、秘書検定2級を受験させていただき、無事合格通知が届きました。
秘書検定2級は、秘書としての振る舞いや一般常識、ビジネスマナーについての問題が出題されます。
いままで仕事を通して学んだことを改めて勉強することで、正しい理解を深めることができました。
マナーなどは、自分では知っているつもりでも、いざ問題を解いてみて正答できるかというとそうではなく、自分が思っているよりも認識が曖昧だということを痛感しました。
受験したことでそういった知識を再確認でき、大変勉強になりました。
法律事務所の秘書業務でも、お客様や相手方代理人弁護士などへの対応で失礼がないようにする必要があります。
皆様に心地よく法律相談に入っていただくことができるよう、今回学んだことを活かし今後も業務に努めたいと思います。
ビジネス法務(労務管理中心)セミナー@沖縄
こんにちは。
来週、株式会社経営支援センター主催のセミナーで講師を務めることになっています。
那覇で行われるのですが、9月9日(火)、10日(水)の二日間にわたり、2時間×2コマ×2日で計8時間の集中講座を行います。
しゃべるのは好きなのですが、8時間分のパワーポイントを作成して、内容を整えるのが非常に大変で、ここ3週間ほどは通常業務とセミナー準備で忙殺されています。。。
内容としては、①トラブル防止の考え方やその実践方法(就業規則や契約書のチェックポイント)、②従業員の採用における効率化や残業代管理の注意点、③懲戒処分、解雇の運用方法や問題社員対応、④改正法への対応や人事組織体制の構築方法等について、弁護士の立場から、分かりやすく、実務に使える内容をお話することにしています。
自分で言うのもなんですが、とても参考になると思いますので(笑)、沖縄で企業の人事労務の担当の方は、是非、㈱経営支援センターの吉田さん宛てにご連絡して、話を聞きに来てください。
ということで、来週は沖縄に行き、そのまま遅めの夏休みを取って、来週中は事務所に出ないことにしています。
再来週からは通常業務に戻りますので、よろしくお願いいたします。
会社が辞表を受理してくれない場合
従業員が会社を辞めたいと思って辞表を提出したけど、会社が受理しない場合、どうなるのですか、という法律相談を受けることがあります。
この場合、まず当該従業員の雇用契約が期間の定めのない雇用契約(いわゆる「正社員」)なのか、期間の定めのある雇用契約(いわゆる「契約社員」)なのかで、考え方が変わってきます。
正社員の場合、従業員は、2週間の予告期間を置けば、いつでも、理由なく契約を解約できます(民法627条1項)。
そのため、辞表を受理してくれなくても、2週間の予告期間を置いた雇用契約解約の通知をすれば、2週間後に雇用契約は終了します。
一方、契約社員の場合、「やむを得ない事由」があるときに「直ちに契約の解除をする」ことができるとの定めしかなく、しかも、その事由が従業員の過失によって生じたときには会社に対して損害賠償の責任を負うこととされています(民法628条)。
そのため、契約社員の場合、辞表を受理してくれなければ、原則として、一方的に雇用契約を終了させることができないということになります。
これは、有期雇用契約においては、当事者双方に対して、定めた期間については雇用保障をすべきと解されていることによります。
もっとも、契約社員であっても、雇用契約において、退職の方法を定めていることがあります。
例えば、「退職する場合は、従業員が1カ月前に退職する旨を通知をすること」等の定めです。
この場合は、雇用契約上の退職事由に基づいて契約を終了させることができますので、雇用契約書や就業規則をよく確認するべきでしょう。
弁護士瓦林道広の労務問題に関するサイトは下記URLをクリック
https://www.pyxida-law.com/fukuoka/labor/
労務問題の関連ブログは下記URLをクリック(下記以外にも有益情報を多数発信しています。)
・契約社員の解雇
https://www.pyxida-law.com/fukuoka/blog/2014/07/post-938939.html
・労働時間管理
https://www.pyxida-law.com/fukuoka/blog/2014/06/post-1-920178.html
・就業規則と懲戒処分
https://www.pyxida-law.com/fukuoka/blog/2014/03/post-7-786401.html
契約社員の無期転換権
平成25年4月1日から改正労働契約法が施行され、有期雇用契約(いわゆる「契約社員」)を通算5年を超えて更新した場合、当該契約社員には自らの契約を期限の定めのない契約にする権利(「無期転換権」と言われています。)が発生することをご存知でしょうか。
私は、顧問先等の中小企業のクライアントから雇用契約に関する法律相談を受けることが多いのですが、労働法が頻繁に改正されていっていることを知らない会社さんが意外に多いです。
特に、会社の人事組織として、契約社員を軸に据えている場合、無期転換権のことを考慮に入れて、人事組織体制の構築方法を十分に検討し、就業規則の整備をしておかなければ、後に無期転換社員が多数出てきて、組織が混乱することになりかねません。
労働問題(使用者側)に詳しい弁護士に相談しておくべきでしょう。
弁護士瓦林の著書内容(「改正労働契約法の詳解」)はこちら
https://www.pyxida-law.com/fukuoka/blog/2014/05/post-24-842922.html
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・契約社員の解雇
https://www.pyxida-law.com/fukuoka/blog/2014/07/post-938939.html
・労働時間管理
https://www.pyxida-law.com/fukuoka/blog/2014/06/post-1-920178.html
・就業規則と懲戒処分
https://www.pyxida-law.com/fukuoka/blog/2014/03/post-7-786401.html
司法試験(論文試験)の答案作成方法
こんにちは。
弁護士瓦林です。
法科大学院の後輩等から、司法試験の論文答案の作成方法につき、質問されることが多いので、ご参考のため、私が受験生時代に実践していた答案作成方法をご紹介します。
但し、これから述べることは、あくまで技術的な話です。
問題の意味を理解し、一定の法的見解を頭の中では出せていることが前提条件となります。
逆に、頭の中では解決までの道筋が見えているのに、答案にするとバランスが取れた内容にならないとか、途中答案になってしまうという人には参考になるかもしれません。
一般的に、試験時間が2時間だったら、1時間を構成に、1時間を書く時間にあてる、という方が多いと思いますが、これをさらに個別の試験時の状況に合わせて具体的な答案作成計画を立てます。
例えば、構成が1時間で終わったとしたら、残り1時間なので、これをどう使うかを考えるのに5分くらいかけます。
前提として、「自分が悩みなく答案を書いたとしたら、1枚書くのに何分くらいかかるのか」を把握しておきます。仮に1枚書くのに大体10分かかるとしたら、残り55分で5枚半書ける計算になります(逆にいうと、5枚半以上は書けない状況であることを認識すべきです。)。
そのときに構成を見返して、「この問題だと、5枚半のうち、この項目については、1枚半くらい使いたい、この項目を述べるには1枚は使うな…」という仕分けをやっていくわけです。そうすると、5枚半の残り枚数がどんどん少なくなっていくので、「じゃあ、この論点は半枚で終わらせないといけないな」というように、5枚半の使い方が決まります。
当然、最初の構成の段階で、残り時間が45分しかなければ、4枚半を分配していくことになります。
そして、構成の見出しの横に赤ペンで何時何分までにその項目に入っていればいいかを書いておきます。
例えば、「第1」の「1」に1枚、「2」に1枚半枚使うなら、「第1」の「2」の横に、書き始める時刻から10分後の時刻を記載します。また、上記の分配であれば、書き始めてから25分後には「3」に入っていなければいけませんので、その時刻を「3」の横に書いておきます。
構成の項目の横に時間を書き終わったら、本文の作成開始です。
答案作成の途中で時計と答案の作成状況を見比べて、「遅れてるな」と思ったら、分量を減らせるところを減らし、「早く進んでるな」と思えば、少し膨らませられる部分も出てきます(大抵、遅れますが。)。
以上のようなことをやると時間を無駄なく使え、答案のバランスもよくなるので、効率よく点数を取れます。
私も当初は、構成が下書きのようになってしまい、時間がなくなって、途中までしか構成を立てずに本文を書き出したりしてしまっていました。しかし、試行錯誤の末、受験前の答案作成を何度もやる時期には上記のようなやり方を繰り返し、本番でも実践しました。
結果、試験時間を30秒以上残したのは初日の選択科目だけで、その他の科目は全てギリギリまで試験時間を使って答案作成をすることができました。
(最後の論点については、まず結論を記載し、その後に理由を追記していく形を取れば、結論にたどり着かずに時間切れとなることはありません。心理的にも余裕を持って記載できます。)
論文試験は、問題の意味を理解し、一定の法的見解を導き出す必要がありますが、一定の法的見解を出すところまで出来ていても、その内容を答案として上手く表現できなければ試験には合格できません。
むしろ、後者の表現力や事務処理能力も法律家の重要な素養として求められているのではないでしょうか。
そのため、限られた試験時間をしっかり管理し、効率よく答案作成することも意識すべきです。
ご要望があれば、また有益情報を発信していきます。
契約社員の解雇
最近、法律相談や事件のご依頼で 有期契約社員の解雇 に関するものが散見されます。
有期契約社員とは、6か月とか1年というように期間の定めのある雇用契約を締結している社員のことで、いわゆる「契約社員」のことです。
これに対し、正社員の雇用契約には、期間の定めがありません。
正社員の解雇と契約社員の期間途中における解雇には大きな違いがあるのですが、皆さんその点の区別をせず、契約社員に対して期間途中の解雇をする例が多いですので、簡単に違いをご説明します。
無期契約社員(正社員)を解雇する場合、就業規則に定めた解雇理由に該当すれば、それが解雇権の濫用(労働契約法16条)にあたらない限りは解雇有効です。
(正社員の解雇も簡単には認められないのですが、ここでは契約社員の期間途中の解雇と比較するためにこのような表現を用いています。解雇権濫用の詳細については別の機会にご説明します。)
一方、有期契約社員(契約社員)を期間途中で解雇する場合は、「やむを得ない事由」が必要であるとされており(労働契約法17条1項)、正社員の解雇と比較すると、解雇有効とされるためのハードルは極めて高くなります。
期間途中の解雇はほとんど認められないといってもいいくらいです。
有期雇用契約においては、期間を限定している以上、当事者双方に対して期間中の雇用を継続しなければならないという要請が強く働く結果、通常の解雇理由にあたるような事実があったとしても、「次回の更新をしなければいいだけではないか」と判断されてしまうのです。
この点を抑えずに、例えば、軽微な遅刻を繰り返す等していた契約社員を期間途中に解雇してしまったような場合には、その解雇は無効と判断される可能性が極めて高いのです。
解雇については複雑な問題がたくさん含まれていますので、何卒、慎重に・・・。
弁護士瓦林道広の労務問題に関するサイトは下記URLをクリック
https://www.pyxida-law.com/fukuoka/labor/
労務問題の関連ブログは下記URLをクリック(下記以外にも有益情報を多数発信しています。)
・労働時間管理
https://www.pyxida-law.com/fukuoka/blog/2014/06/post-1-920178.html
・就業規則と懲戒処分
https://www.pyxida-law.com/fukuoka/blog/2014/03/post-7-786401.html
労働法勉強会
弁護士会には委員会活動というものがあり、様々な分野の法制度や実務上の問題を研究して、対外的に提言をしたり、書籍を出版する等の活動をしています。
私は、第一東京弁護士会の労働法制委員会に所属していますが、労働法制委員会では、労働法分野における判例の研究や労働法分野における最新の法制度の研究を定期的に行っています。
当委員会では、毎年、夏期合宿を行います。
一泊二日で旅館に泊まり、二日間にわたってその年のテーマについて議論するのです。
例年、かなり濃密で高度な議論が交わされていて、非常に勉強になります。
今年の合宿は、7月4日(金)、5日(土)で行われ、一日目は「休職期間満了退職」、二日目は「定額残業代」について議論しました。
私は、一日目の発表者でしたので、判例を研究して、事案の内容や問題となる点の報告をしてきました。
合宿で学んだ、実務上使える知識等については次回以降にご紹介しますね。
このような日々の研鑽を積み重ねて、専門職としての価値を高めていきたいと思います。