よくある労務問題の相談ケース
- 残業代請求や従業員の地位確認請求に関するご相談
- 就業規則の作成・改訂に関するご相談
近時、労働問題については社会的な関心が高いこともあり、相談の件数は増加しています。
「かつての従業員が退職した後、残業代請求の内容証明郵便が届きましたが、全額支払わないといけないのですか」あるいは、「従業員を解雇したら裁判所から呼出状が届いたのですが、どのように対応すればいいですか」といった内容のご相談が非常に多いです。
また、労働関係法は、社会情勢の変化に伴い、めまぐるしく法改正が行われています。企業は、法制度が変わるたびに、改正内容を就業規則に盛り込み、企業の労務管理に反映する必要があります。そのため、就業規則の作成・改訂や、雇用契約書の内容に関してのご相談を受けることも多いです。
その他、比較的多いご相談として、労災事故に関するご相談や、労働組合が団体交渉を申し入れてきた場合の対応についてのご相談等があります。
弁護士に依頼するメリット
- 司法判断の見通しを立てたうえで最善の対応を行うことができます。
- 労働法制度の変更を適切に就業規則に反映させてトラブルを未然に防ぎます。
- 各企業の事情に即した人事組織体制の構築方法についてアドバイスが得られます。
労働事件には、労働審判という特有の裁判手続きや複数の裁判外紛争解決手続きが存在します。弁護士に委任した場合、これらの手続きの存在も踏まえた上で、事件の見通しを適切に行い、当該事件に即した最善の対応をとることができます。
また、複雑に変化していく労働関係法の内容を把握し、就業規則の変更などについて的確なアドバイスを受けることができます。就業規則は、従業員との関係を規律するものであると同時に、問題が発生したときに企業を守るものでもありますので、弁護士に当該企業の考え方や背景事情を話したうえで適切な内容の就業規則の作成を行うことには大きなメリットがあります。
刻々と変化していく社会情勢の中で、企業の人事組織体制をどのように構築していけばいいか、という点を考える際には、最新の労働法制度と当該企業の活動実態の双方を把握している必要があります。弁護士に相談することで、企業の人事組織体制の根本について考え直し、よりよい体制を構築することが可能になるでしょう。
各種請求を受けた場合の対応
- 残業代請求に対しては、一定の割合で払わざるを得ないケースが多いですが、事案に応じて適切な金額となるよう交渉し、再発防止策を検討します。
- その他、解雇に関する請求や労災事故に関する請求に対してもその後の展開について見通しを立て、最善の解決策を模索します。
残業代請求
多くの中小企業では、労働基準法の理解が不足したまま労務管理を行っています。そのため、従業員から残業代請求がされると、企業がお金を払わなければならないケースがほとんどです。
残業代請求に関するご相談を受けた場合、まずは相手方の請求内容を精査し、裁判手続きになった場合にどの程度の金額が認められてしまうかを把握したうえで相手方との交渉に臨みます。
裁判所の判決で残業代支払命令が出される場合、残業代が最大二倍になる「付加金」(罰金のようなもの)の支払いが命じられることもあります。そのため、裁判での結論を十分に見通した上で、話し合いでの解決を図ることが非常に重要になります。
一つの残業代請求をきっかけとして、次々に他の従業員からも残業代請求が起こることがありますので、そのような波及効果を防止し、同じようなことが起こらないようにするため、企業としてどのような組織体制を構築しておけばよいかについてもアドバイスいたします。
その他の請求
残業代請求以外にも、有期雇用契約者(いわゆる「契約社員」)の雇止めの有効性や正社員の解雇の有効性が争われたり、配転命令や懲戒処分の有効性が争われたりするようなケースもありますが、これらの各種請求についても、その後の展開や司法判断の見通しを立てたうえで、当該企業の筋は通しつつ、なるべく早期に解決できるよう尽力いたします。
相談事例
事例:労務問題の相談 未払い残業代の請求
1.相談内容
退職した社員から2年間分の未払い残業代請求の書面が届き、適切な対応方法を相談したい。
また、今後、同様の問題が起こらないようにするため、適切な労務管理体制について教えてもらいたい。
経緯・発端
『退職した社員から代理人を通じて、未払い残業代請求の書面が会社に届いたが、会社を設立して初めてそのような請求を受けたので、企業として適切な対応を取るために、今後の対応方法や法的なアドバイスを受けて解決していきたい。』という相談を受けました。また、同時に、『今後、同様の問題が起こらないようにするために、自社に適した労務管理体制について教えて欲しい』と依頼されました。
相談・打合せ
具体的な打合せ内容として
【事実確認】
最初に、当該元従業員の労働実態について、詳細なヒアリングを行い、法律的にどのくらい残業時間があったのかの確認を行います。また、雇用契約書や就業規則等も確認し、当該元従業員の労働条件や、当該会社における労働時間管理がどうなっていたのかについても把握します。さらに、会社としては、当該元従業員における労働時間や残業代計算に関する主張に対し、どのような反論があるのかも確認します。
【残業代の試算】
手元に集まった証拠資料や元従業員側の主張、会社の主張をもとに、何パターンかの残業代計算を行います。まずは、労働審判や訴訟等の裁判手続きになった際、裁判所はどう判断する可能性が高いか、という観点から残業代計算を行い、交渉における最終的な落としどころを探る(司法判断になればこのくらいの金額になる、ということを把握する)ための計算を行います。また、いくつかある争点のうち、この争点をこちらの有利に計算するとこうなる、という形で何通りか計算をしたり、会社の主張が全て通った場合の金額についても計算も行います。そのうえで、交渉において最初はどのような金額から提示していくか、どの程度の金額で合意できなければ裁判手続きもやむなしと考えるのか、といった方針について、会社と協議を行います。
【相手方との交渉】
交渉には色々なやり方がありますが、私の場合は、最初の一回は相手方代理人と直接面談をすることを心掛けています。弁護士も人間ですから、書面のやり取りと電話だけで交渉を行うよりも、一度でも顔を合わせて話をしておくと、ある種の信頼関係が生まれやすく、話し合いはまとまりやすくなると考えているからです。
面談時、相手方代理人に、こちらの提示額とその根拠を説明します。また、その際、相手方本人にどのくらい譲歩の余地があるのかや、裁判手続きに持っていく意向がどのくらい強いのか等も確認し、その回答を持ち帰って、会社と協議を繰り返しながら交渉を進めていきます。
対応結果
交渉の結果、相手方が主張していた労働時間のうち、例えば、勤務開始前や勤務終了後の在社時間の一部について、労働時間と認めないとする会社の主張を通したり、争われていた固定残業代の有効性について会社の主張を通したりできることもあり、そのような場合は請求額に対し、支払額を大幅に減額できることになります。(事案によります。)
残業代請求事件は、一つの案件が他の社員に波及することがありますので、本件の交渉中から、今後同じような問題が発生しないように、労務管理体制の改善点(残業の事前申請制度など)について提案し、残業代請求が波及するなどの紛争を予防する体制を整えるためのアドバイスをさせていただきます。